異次元緩和の高い自己評価に根拠はあるか
2022.03.01日本銀行の黒田東彦総裁が1月の会見で、異次元緩和に対する自己評価を述べている。「実際にあり得た他の金融政策に比べ、経済の回復を助け、デフレからの脱却を助け、企業収益を改善し、雇用も大幅に伸びた」との高い評価だ。
この主張には、どれほどの根拠があるだろうか。
揺らぐ物価目標の位置付け
はじめに問われるべきは、物価目標との関係だ。異次元緩和の開始から約9年が過ぎた。この間、物価目標2%は一度も達成されていない(参考1参照)。評価するには、まずもって物価目標の位置づけが明確でなければならない。