金融経済イニシアティブ

山本謙三のコラム・オピニオン

山本謙三による金融・経済コラムです。

異次元緩和の負のトライアングル:山本謙三の金融経済イニシアティブ ~縮む市場経済、軋む金融システム、緩む財政規律

2019.04.26

地域金融機関が苦境にあえいでいる。日本銀行が半年に1度公表する「金融システムレポート」でも、回をおうごとに経営基盤が弱体化していることが分かる。

 

収益悪化の理由は、①異次元緩和の長期化と②地域の資金需要の減少だ。日銀は後者の構造要因を強調するが、本当にそうか。メガバンクも、国内商業銀行業務の収益悪化は著しい。

 

そもそも、異次元緩和の生み出す金融環境があまりに極端なため、借入需要減少の影響を取り出して、各金融機関の真の実力を測ることすら難しい。現下の金融環境はどれほど「特異」だろうか。

キャッシュレス、誰がコストを負担するか:山本謙三の金融経済イニシアティブ ~No free lunch、タダで利用できる幸運はない

2019.04.01

 

前回のコラムで、日本は、電子マネーが銀行発行のデビットカードを凌駕する唯一の国であることを書いた(2019.03.01「なぜ銀行はキャッシュレスに出遅れたか」参照)。

 

たしかに、電子マネーに代表される非銀行系のキャッシュレスは、利用者(消費者)にとって「お得感」が強い。ポイントもクーポンもつく。だが、キャッシュレスをめぐる費用・便益の構造は複雑だ。インプリシットな(暗黙の)負担もある。利用者は、本当にコスト負担なしに便益を享受しているのだろうか。

なぜ銀行はキャッシュレスに出遅れたか:山本謙三の金融経済イニシアティブ ~電子マネーがデビットカードを凌駕する唯一の国

2019.03.01

 

日本はもともと、資金決済のオンライン化がいち早く進んだ国だった。1973年に全国銀行の内国為替システムが稼働を開始し、手形・小切手決済の多くがオンライン決済に移行した。家計の決済も、公共料金の自動引き落としや給与の振込みが広く利用されてきた。

 

だが、日々の買い物には現金決済が多く残った。現金の取り扱いは、店舗だけでなく銀行にも多額のハンドリング・コストがかかる。にもかかわらず、銀行によるキャッシュレスはなかなか進まなかった。最近のキャッシュレスも非銀行系企業が主導する。なぜこうなったのだろうか。

変貌する地方・大都市間の人口移動:山本謙三の金融経済イニシアティブ ~地方創生目標「2020年までに、東京圏への転入超ゼロ」の達成はいよいよ絶望的に

2019.02.01

「地方創生」には、いくつかの成果指標(KPI)が掲げられている。「東京圏への人口転出入を2020年時点で均衡させる」は、その一つだ。すなわち、東京一極集中の是正である。

 

「地方創生」が開始される直前(2013年)の東京圏への転入超数は、9.7万人だった(日本人移動者、注1)。その後の5年を経て、昨日公表された2018年の実績は、13.6万人の転入超を記録した。ゼロに向かうどころか、4割も拡大した(参考1)。今後多少の変動があるにしても、「2020年までに転入超ゼロ」の目標達成は絶望的といってよいだろう。

(注1)総務省「住民基本台帳 人口移動報告」は、2014年以降、外国人を含む移動者総数を公表しているが、本稿では過去と比較するため、日本人移動者のデータを用いている。 

[本稿は、金融ジャーナル社「月刊金融ジャーナル」2019年1月号 総特集:2019年金融界の進路 Part I:2019年を読み解くキーワード<出口戦略>への寄稿「異次元緩和に出口は来るか」を転載するものです]

 

物価はなかなか2%に達しない。銀行収益の悪化、金融市場の機能低下、財政規律の弛緩といった異次元緩和の副作用が目立つが、日本銀行は「物価目標2%の安定的な達成」へのコミットメントを強調し続ける。出口ははるかに遠い。金融機関は覚悟して厳格なストレステストを実施し、十分な資本と流動性の確保に努める必要がある。2019年は、物価目標2%を機械的に追い求める政策運営の妥当性を検証する年になるだろうか。

 

景気や経済のイメージは、株価の動向でつくられがちだ。アベノミクスもその一つだろう。財政・金融両面から積極策がとられ、株価の水準(TOPIX)は、第二次安倍政権の発足後、2倍弱になった。「日本経済はアベノミクス下で復活した」とのイメージが一般的だろう。

 

では、実際はどうか。実質GDPの動向で確認してみよう。

消費増税対策はなぜ景気の平準化に寄与しないのか ~ポイント還元、プレミアム商品券は何のため?

2018.12.01

来年秋の消費税率引き上げを控え、増税対策のメニューが固まってきた。キャッシュレス決済へのポイント還元やプレミアム商品券の配布、住宅や自動車関連の減税、などだ。

多くの対策の狙いは、消費増税に伴う駆け込み需要と反動減を緩和し、景気を平準化することとされる。キャッシュレス決済へのポイント還元率も、当初想定の2%から5%に引き上げられた。対策の総額は、消費税率引き上げに伴う家計の負担増加額2兆円強に匹敵する規模になると伝えられる(2018年11月22日付け日本経済新聞朝刊)。

だが、この増税対策は景気の平準化にあまり寄与しない。なぜだろうか。

金融システムは「安定している」か ~日銀・金融システムレポートが多くを語らぬこと

2018.11.01

銀行の苦境が止まらない。全国銀行の総資金利ざや(注1)は、昨年度(2017年度)、ついに0.1%を割り込んだ。05年度のわずか5分の1の水準だ。銀行は経費を圧縮して対抗するが、追いつかない。

 (注1)総資金利ざや=貸出・有価証券等の資金運用利回りー資金調達原価(経費を含む)

ブロックチェーンは、仮想通貨を支える基礎技術だ。①改ざんされていないこと、二重払いされていないことを担保できる、②すべての履歴が記録される、③中央管理者が不要となる(そのためコストが低く、災害にも強い)といったメリットがある。

仮想通貨に限らず、このメリットの応用範囲は広い。実際、これまでも様々な分野で実証実験が行われてきた。にもかかわらず、現実に適用が開始された例は少ない。そのために、評価も、過大評価、過小評価の間を行き来する。なぜそうなのか(注1)。

 

日本銀行は、7月末の金融政策決定会合で、長期金利の変動幅を拡大させるとともに、「政策金利のフォワードガイダンス」を導入した。「当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」という内容だが、過去のガイダンスとは性格が異なる。なぜ、どう変質したのか。

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