金融経済イニシアティブ

山本謙三のコラム・オピニオン

山本謙三による金融・経済コラムです。

「賢明な歳出(ワイズスペンディング)」を阻む危機感の欠如 ~Go To、一律現金給付、予備費の「なぜ?」

2020.09.01

政府の経済財政諮問会議で、民間議員が「賢明な歳出(ワイズスペンディング)」の重要性を強調している。しかし、コロナ禍を受けた2度の補正予算をみる限り、その実現は遠い。

 

例えば、4月に成立した第1次補正予算には「農林水産物・食品の輸出力・国内供給力の強化(1,984億円)」や「公共投資の早期執行等のためのデジタルインフラの推進(178億円)」がある。名目はコロナ対応であるが、従来型の手法——すなわち、当初予算に織り込めなかった事業を補正予算に組み込む手法としかみえない。

 

早期の支給をうたった「一律10万円の現金給付」は、オンライン申請の混乱もあり、多くの時間を要した。そうであれば、「困っている家計に重点的に配布する」という当初方針の方が、理にかなっていただろう。

なぜ地方創生は目標を達成できないのか ~施策を競うのでなく、新陳代謝の促進を

2020.08.03

「地方創生」の政策が始まって、6年近くが経つ。基本目標の一つ「東京圏への人口流入超を2020年までにゼロにする」は、ゼロに向かうどころか、拡大した(2020年1月「なぜ、東京圏、大都市圏への人口流入は止まらないのか」参照)。足元はコロナ禍の影響で流入ペースが鈍化したが、経済が回復すれば再び拡大に向かうだろう。人口移動は景気に比例するからだ。

 

政府は、目標そのものは維持し、達成時期を25年まで先送りした。今年の「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針2020)も、従来の方針を踏襲し、数多くの関連施策を並べている。しかし、今必要なのはアプローチの抜本的な見直しだろう。

 

人口移動は、人々が居住地を自由に選択した結果だ。各自の合理的な判断をさておいて、「「新たな日常」が実現される地方創生」、「二地域居住」といっても、結果は限られる。

リモートワークはなぜ難しいのか、どう克服するか(全2回) ~その2(完)・リモートを阻む「意識」と「制度」

2020.07.01

前回述べたように、リモートワーク(テレワーク)に向く仕事は、案外多い。オフィスワークと称される仕事のほとんどは、これに当たる。リモート移行への抵抗感も、緊急事態宣言下の在宅勤務でかなり薄れたようにみえる。

 

しかし、壁は厚く、高い。たとえば、物理的な文書の保存を定めた内部管理の方法やメンバーシップ型雇用制度の限界は、すでに多く指摘されてきた。しかし、これらの「制度の壁」以上に難しいのは、「意識の壁」である。

[本稿は、金融ジャーナル社「月刊金融ジャーナル」2020年6月号「第II特集 口座維持手数料のあり方」のインタビュー記事「口座維持手数料はマイナス預金金利の代替物~急がれるビジネスモデルの転換」を転載するものです。]

 

 

(編集部)未利用口座管理手数料を導入する金融機関が増えている。背景にあるものは何か、また、日銀のマイナス金利政策の長期化で金融機関の収益力が低下する中、預金口座の維持管理、決済システムの安定的な提供を確保するためのコストはだれが負担するのか。元日本銀行理事、オフィス金融経済イニシアティブの山本謙三代表に聞いた。

リモートワークはなぜ難しいのか、どう克服するか(全2回) ~その1・リモートに向く仕事、向かない仕事

2020.06.20

コロナ危機は、私たちの仕事や暮らしを大きく変えた。リモートワーク(テレワーク)やオンライン飲み会といった、新しい働き方や楽しみ方も付け加わった。

しかし、将来ワクチンが開発され、普及したあとはどうなるか。新しい日常が定着するのか、元の生活に戻るのか。その見極めは、リモート化投資の是非を決める最大の要素となる。

コロナ危機後の世界経済、日本経済 ~グローバル・サプライ・チェーンはどう変わるか

2020.06.01

緊急事態宣言が解除され、「新しい日常」が始まった。今回のコロナ危機を受け、世界経済、日本経済はどう変わるか。

 

まず、グローバル・サプライ・チェーンの行方を考えてみたい。世界経済の発展の原動力となってきたサプライ・チェーンの拡充に変化はあるか。

 

デジタルが金融を変える要素のうち、最も重大な変化は、顧客の意識や行動の変容にあるのかもしれない。

 

他分野の経験によれば、デジタル化が深化するにつれ、顧客はサービスの単なる享受者から生産者に変わる。受動から能動への変化だ。その先の金融業とは、どのようなものだろうか。

 

(連載最終回。第1~5回は末尾関連コラムを参照。)

デジタル技術の浸透は、価格の設定方法(プライシング)も変える。

 

企業や金融機関は、需要、供給に関する情報を、時々刻々と手に入れられるようになった。料金改定に要する時間も、劇的に減った。

 

だが、それだけではない。異業種が、大胆なプライシング戦略をもって、金融業に参入してくる。金融機関は、この環境変化に対抗しなければならない。

 

(連載第5回。第1~4回は末尾関連コラムを参照。)

デジタル技術の浸透で、金融市場のプレイヤーも変わる。その理由は明白だ。

 

新たなプレイヤーは、多くの機能をリバンドルした「一連のサービス」の提供を図る。その外延は、金融分野だけでなく、多分野にわたる。異業種にとって金融分野は、かかわりをもつ一分野との位置づけにある。

 

新規プレイヤーが展望する世界は、金融業が従来想定してきたものよりもはるかに広い。それゆえに、競争政策、信用秩序の維持など、既存の規制としばしば衝突する。突きつけられる課題は重い。

 

(連載第4回。第1~3回は末尾関連コラムを参照。)

金融サービスがデジタル技術の浸透で変わるのは、自明にみえる。

 

しかし、フィンテックの実例をみれば、劇的に変化したのは、サービスの周辺部にかかるプロセスが圧倒的だ。サービスのコア部分、すなわち預金、貸出などの根本にアクセスしているものは少ない。その意味で金融業、とりわけ銀行業は「枯れた産業」ともみえる。

 

それでも、デジタルのインパクトは計りしれない。金融機能を分解し、機能を組み直したり、付け加えることで、より高い付加価値を生み出すことができる。既存の規制や慣行をいったん横に置けば、新たなサービスの開発余地は存外大きい。

 

(連載第3回。第1~2回は末尾関連コラムを参照。)

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