日銀はなぜバランスシートを切り離せないのか ~これ、すなわち「財政ファイナンス」と呼ぶ
2024.04.012024年3月19日、日銀はマイナス金利の解除とイールドカーブ・コントロール(YCC)の撤廃を決めた。植田和男総裁は、金融政策決定会合後の記者会見で「普通の金融政策を行っていく」意向を表明した。次の焦点は、巨額に達した保有国債の対処に移る。
今回の決定で、日銀は当面、従来とおおむね同程度(月間6兆円程度)の長期国債買い入れを続けるとした。この金額は、今後到来する償還金額とほぼ同額である。日銀の保有国債残高は、当面、減りも増えもしない。
当コラムでは、金融の正常化局面に入れば、早期に保有国債の圧縮プログラムの提示が必要と述べてきた(2024年3月「ETF依存を高める日銀財務の「健全性」」)。長期金利が大幅に上昇する場面での買い増しはやむをえないが、それも例外的、限定的にとどめるべきとの考えだ。
これに対し、一部にはより大胆に、現行の日銀バランスシートのほぼすべてを政府に移管し、金融政策は新しい日銀が厳格なルールに基づき運営すべきとの主張がある。
もちろん思考実験だが、財政ファイナンス類似の金融調節から決別し、金融政策をオーソドックスなものに戻そうとの趣旨である。日銀保有のETFの含み益や分配金が多額にのぼるため、移管を受けた政府にも当面支障が生じないはずとの見立てである。