金融経済イニシアティブ

野球チームのオーナー?になる

2018.08.22

20年ほど前、ニューヨーク郊外で家族と過ごしていた。

当時現地の小学校に通う長男(小4)が、ある日「クラスメイトのほとんどがリトルリーグに参加するらしい」と聞きつけてきた。

この町は、毎年春になると子どもたちのためにリトルリーグ(野球)を開設するらしい。チーム数は、女子チームや低学年チームを含め100近くにもなる。選手がレベルに応じてチームに振り分けられたあと、ボランティアのコーチのもとで練習を行い、その後10試合くらいを転戦する。

申込み用紙をとりよせてみると、参加料はわずか10ドル。ユニホーム代わりのTシャツ込みだから、ほんとうに安い。いくら町の主催とはいえ、どうやって運営を成り立たせているのか。

用紙をたどっていくと、末尾に、「Donation 100ドル / Sponsor 200 ドル(任意)+名前記入欄」を発見。なるほど、やはり寄付で成り立っているのか。

私の場合、寄付100ドルでも少ないかもしれない。子どもを現地の公立校に通わせているうえに、町の人々からたいへん親切にしてもらっている。この際、お礼を込めて200ドルを選択しよう。さっそくSponsor欄に私の名前を記入し、小切手を添えて郵送した。

1か月後、自宅にチームの振り分け表とTシャツが送られてきた。長男の所属チームは “ Power Plus Electric ”。かっこいい名前だが、実は地元の電気設備関係の会社らしい。ほかにもピザ屋の ” Pizza 2000 ” など、なじみのある名前が並ぶ。面白いのでリストをたどっていくと、目に飛び込んできた低学年チームの名が “ K.Yamamoto ”。

ん!?

一瞬頭が白くなったのち、私は悟った。

Sponsorとは、寄付ではなく、チームのオーナーになるという意味だったのだ。

なるほど、だからスポンサーかぁ、、、、、などと納得している場合ではない!

まずい。これは、ヒジョーにまずい。芸能人でもないのに、私の名が、選手のユニホームの胸に刻まれる。チーム名の由来を聞かれて、「いや、英語が、、、」と言い訳をしなければならない。ヒジョーにまずい。こうなれば、家族にだけ事情を話し、息をひそめているしかない。

だが、さっそく翌日、妻が近所の日本人から、「今度、K.Yamamotoっていう新しい日系の店ができるらしいわよ」との怪情報?を入手してくる。

私と同じイニシャルの長女(小1)は、学校のクラスメイトから、「俺、こんどK.Yamamotoってチームに入るんだけど、もしかして、お前のことか?」と尋ねられ、おかんむり。

あげくの果ては、同僚から、「あ、チームのオーナーになったら、選手をピザ屋に招待して、好きなだけ食べさせるのがアメリカの良き慣行」などとからかわれる始末。

人生、一体、どこに災いが潜んでいるか分からない。

(イラスト:鵜殿かりほ)