異次元緩和が終われば、民間預金は減少する? ~『出口』戦略の高い、高いハードル
2014.05.01民間預金は実体経済に比べ2割多い
量的緩和に関連してしばしば指摘されるのが、信用乗数の低下だ(注1)。日本銀行による巨額の資金(マネタリーベース)の供給にもかかわらず、預金(マネーストック)の増加はわずかにとどまったという話である。それは、事実だ。
山本謙三による金融・経済コラムです。
量的緩和に関連してしばしば指摘されるのが、信用乗数の低下だ(注1)。日本銀行による巨額の資金(マネタリーベース)の供給にもかかわらず、預金(マネーストック)の増加はわずかにとどまったという話である。それは、事実だ。
銀行の基礎的な収益が悪化を続けている。「目利き能力の低下など、銀行の努力不足が原因」との見方があるが、理解不足というものだろう。事実関係とともに、あらためて整理しておきたい。
の基礎的な収益は、一般にコア業務純益で測られる(注)。日本銀行「金融システムレポート」に示されたグラフをみると、2000年以降のコア業務純益(対総資産比率)の悪化は貸出利鞘の縮小と預貸差の拡大(預金超過の拡大)でほとんど説明されることが分かる(参考1)。貸出利鞘の縮小と預金超過の拡大が同時に生じたということは、資金需要がこれまでいかに乏しかったかを物語る。
もしヒトが普通の動物ならば、長生きすれば、その分長く働くだろう。自分で餌を探さなければならないからだ。もし今日神様から、「あなたは予定より10 年長く生きることになる」と宣告されれば、同時に「10年長く働いてもらう」と言われても納得するだろう。勤労は長生きの対価だ。では、実際はどうか。
高齢化の進展に伴い、一部地方大都市への人口流入が加速している。人口移動報告に基づき21大都市(東京都特別区部<23区>および政令指定都市)の転出入状況をみてみよう。
首都圏6都市、大阪市、名古屋市への人口移動は、2010年代に入り流入ペースが幾分鈍化した。対照的に、地方大都市の転入超過数は過去最高を記録した(参考1)。
OECD(経済開発協力機構)とWTO(世界貿易機関)が共同で、付加価値ベース貿易統計の公表を始めている。従来の貿易統計とちがい、貿易財やサービスに含まれる付加価値を、どの国がもともと創出したかに遡って記録するものだ。
高齢化社会で日本経済の活力を維持するには、女性就業率の引上げが欠かせない。しかし、都市部における保育所、保育士の不足問題は依然解消していない。では、保育士を増やすための仕掛けはどうなっているか。
人口減少社会では、国民福祉は、実質GDPよりも、一人あたり実質GDP(またはGNI)の成長率で測るのが一層適切だ。しかし、高齢化の進む日本ではこれを維持することも容易でない。現役世代が生みだす付加価値を、より多くの高齢者と分かたねばならないからだ。
現役人口(15~64歳の生産年齢人口)と老年・年少人口の割合は、2010年に2:1だった。これが2060年には1:1となる。この変化は、一人当たり実質GDP成長率を年率0.4%以上押し下げる要因となる。豊かさを維持するには、生産性の引き上げとともに、就業者数の増加がどうしても必要となる。
就業者の増加で期待されるのは、高齢者、女性、外国人である。このうち潜在的な数の多さでは圧倒的に高齢者だ。そこで、次のように考えてみよう。
2000年代なかば以降、金融機関の預貯金は、どの業態もおしなべて年率2%前後の伸びを維持してきた。貸出が業態間でかなりのばらつきを示したのに比べ、大きなちがいだ。これには、地方経済が低迷する一方で、年金のコンスタントな流入が地域金融機関の預貯金を下支えしてきたことが大きい。
しかし、これからの人口動態を踏まえると、地域金融機関の預貯金をめぐる環境は大きく変わる。