日銀の今次利上げが意味するもの ~「物価と賃金の悪循環」の可能性にも留意せよ
2024.08.01日本銀行は、7月31日の金融政策決定会合で、国債買い入れの減額計画とともに、短期金利の誘導目標の引き上げ(0~0.1%から0.25%へ)を決定した。
日銀のロジックを追いかけてきたエコノミストにとっては、今回の利上げは意外なものだっただろう。前回決定会合後の経済指標は、GDPギャップのマイナス幅拡大、実質消費支出の低迷、鉱工業生産の低下など、多くのものが小幅の悪化を示していた。
また、日銀が「見極める」としてきた「物価と賃金の好循環の強まり」も、実質賃金が26か月連続して前年割れを記録するなど、好循環には程遠い状況にある。
それでも、日銀は「経済・物価はこれまでの見通しに概ね沿って推移している」とし、「賃金も、幅広い地域・業種・企業規模において、賃上げの動きに広がりがみられている」との理由をあげて、利上げに踏み切った。
エコノミストが混乱するのも無理はない。日銀自身の掲げるロジック自体が変容しているように見える。解釈の難しいところだが、詳しくみてみよう。