正常化へのコミットを避ける日本銀行 ~「賃金と物価の好循環」などのレトリックが示唆するもの
2025.09.01日本銀行は、政府や各国中央銀行と同様に、どのような言葉を用いて政策を発信するか、日々知恵を絞っている。
最近目立つのは、従来用いてきた言葉をいつの間にか使わなくしたり、内容を変えたりする例である。なぜそうなのか。背後にある日銀の基本スタンスを探ってみよう。
言及しなくなった「正常化」
「正常化」は、異次元緩和の期間中、解除に向けての条件やその後の金融政策を理解する上でのキーワードだった。日銀自身も記者会見などの場で尋ねられる度に、正常化に向けての考えを述べていた。今も、審議委員(総裁、副総裁を除く政策委員)の講演などには登場するワードだ。
しかし、この1年あまり、正副総裁の会見や講演には「正常化」への言及は見当たらない。