なぜ高齢者は消費に向かわず、預金を溜め込むのか ~「長生きリスク」の経済学
2016.03.01一段と拡大した金融資産の世代間格差
総務省が5年ごとに実施する「全国消費実態調査」の2014年調査結果が、昨年公表された。
家計の金融資産・負債(2人以上世帯、含む非勤労者世帯)の状況をみると、資産の高齢層への偏在や預金指向の強さといった従来の特徴に、大きな変化はみられなかった。
そうしたなかで、今回とくに目立ったのは、ネット金融資産保有額の世代間格差の拡大である(参考)。
山本謙三による金融・経済コラムです。
総務省が5年ごとに実施する「全国消費実態調査」の2014年調査結果が、昨年公表された。
家計の金融資産・負債(2人以上世帯、含む非勤労者世帯)の状況をみると、資産の高齢層への偏在や預金指向の強さといった従来の特徴に、大きな変化はみられなかった。
そうしたなかで、今回とくに目立ったのは、ネット金融資産保有額の世代間格差の拡大である(参考)。
「東京一極集中」という表現はミスリーディングだ。都道府県単位でいえば、最近20年間の人口移動の特徴は、「中核4域7県への凝縮」にある(注1)。中核4域7県とは、東京圏4都県(東京、神奈川、埼玉、千葉)と大阪、愛知、福岡だ。
(注1)市町村単位でみれば、中核4域内大都市に札幌、仙台などを加えた10数都市への「凝縮」が特徴となる。
これは、1990年代半ばまでの20年間と比較すれば、より鮮明となる。当時の人口移動の特徴は、東京、大阪、愛知からの人口流出と、周辺各県への人口流入だった。
これが、90年代半ばを境に逆転した。
政府の「まち・ひと・しごと創生」の方針に従い、多くの自治体が地方人口ビジョンと地方版総合戦略を発表している。政府の基本目標は、「地方・東京圏の転出入均衡(2020年)」や「2020年までの5年間で若者雇用創出数30万人(地方)」だ。これにならって、ほとんどの地方自治体が人口の転入超(または転出超減)を目標に掲げる。
しかし、地方から東京圏への転出超は、2015年中はむしろ拡大した(11月までの実績)。2014年中の実績11.6万人から政府目標を機械的に計算すれば2015年は2万人程度の縮小が期待されたが、実際には前年同期比1.2万人の拡大となっている(参考1)。
1年前、財布の中の現金残高が減っている話を書いた(2014年12月「若者たちの財布の中身は本当に減っているのか?」参照)。クレジットカードの普及やATM台数の増加で、多額の現金を持ち歩く必要がなくなったからだ。
では、電子マネーの効果はどうか。
総務省統計局の「家計調査」(総世帯)を基に年齢層別の一世帯当たりの消費動向をみると、世帯主が50歳代の世帯が最も消費支出が多い。ただし、これは世帯の人員数に影響されている。
そこで、これを世帯平均人員で割り、一人当たりの消費支出額を計算してみた。結果は次のとおりである(注)(後掲参考1参照)。
都市と地方の間の人口移動には、年齢層ごとに特徴がある。
都市部への人口移動は、10歳代(進学期)、20歳代(就職期)が多い。その規模が圧倒的に大きいため、全年齢層合計の人口流出入も都市部の大幅な流入超となる。
一方、10歳代、20歳代を除く年齢層の合計は、実は地方部が流入超だ。
フィンテック(FinTech)がブームだ。
多くのベンチャー企業が、最新の情報通信技術を駆使して、新たな金融サービス(フィンテック)の提供に乗り出している。企業の数は世界で1,000を優に超えると言われる。
家計の利用する小口決済手段が、ここ10年ほどで大きく変化している。
クレジットカード、電子マネー、コンビニ収納代行、代金引換(代引き)の利用が増え、プリペイドカードが復活しつつある。一方、内国為替(銀行振込)やデビットカードの利用は、漸増ないし漸減の状態にある。現金の利用も、シェアは緩やかに低下している。
団塊世代と呼ばれる1947~49年生まれは突出して人口が多いため、彼らの人口移動は、その都度大きな社会現象を生み出してきた。では、彼らは年齢とともに、どう地方圏と3大都市圏の間を移動してきたのだろうか。以下、国勢調査を基に確認してみたい(注)。
15~64歳の年齢層は、一般に「生産年齢人口」と呼ばれる。働き手の主力として想定されている年齢層だ。高校、大学期を含むので、必ずしも今の時代になじまない面があるが、世界共通の尺度として用いられているものなので、本稿もこれに準拠しよう。ちなみに、0~14歳は「年少人口」、65歳以上は「高齢者人口(または老年人口、老齢人口)」と呼ばれる。