金融経済イニシアティブ

カーリング体験記

2025.11.04

7月下旬、軽井沢に出かけた。

カーリングの体験レッスンを受けるためだ。

 

今年の夏は、軽井沢も暑かった。

そこへ、ジャンパー、長ズボン、手袋、毛糸の帽子、ネックウォーマーを抱え、移動するのだった。

 

以前から、興味はあった。

たまたま軽井沢のアイスパーク前を横切ったことがあり、そこで体験レッスンが受けられることをあとで知った。

しかし、決断することなく、今に至っていた。

 

業を煮やした妻が、参加方法を調べ、私に突きつけてきた。

彼女の言を借りれば、私は「なかなか動かない人間」だそうだ。

私自身は、これを「動じない人間」と呼ぶ。

ニュアンスの相異に過ぎない。

 

カーリングの妙

 

カーリングの妙は、知略とチームワークにある。

 

氷上でストーン(石)がどう動くか、氷の状態がどう変化しているか、別のストーンに当たれば動きがどう変わるかを、瞬時に判断しなければならない。

 

チームは4名(+控え1名)の編成で、ストーンを投じる者1名、氷の表面をブラシで掃く者(スイーパー)2名、的(ハウス)の後方から指示をする者(スキップ)1名に分かれる。

 

どうしても指示役のスキップが脚光を浴びがちだが、最近は、スイーパーの力量にも焦点が当たる。

ストーンの曲がりは、スイーパー次第で大きく変わるからだ。おかげで、選手たちは基礎体力づくりに余念がない。

 

さはさりながら、スキップとスイーパーが自由自在にストーンを操れるわけでもない。

投げ手のスピードや方向によっては、スイーパーがどう掃こうとも、針路を変えられない事態も起きる。

 

真のチームワークが試される競技といってよい。

 

レッスン開始

 

体験レッスンの催される「軽井沢アイスパーク」は、日本代表の常連、S&C軽井沢クラブの本拠地で、その一角が体験レッスンに当てられていた。

 

レッスンは、1グループ16人。45メートル以上あるシート(プレイエリア)を半分に分け、2グループ32人が同時にレッスンを受ける。

 

参加者は、わが老夫婦から小4ぐらいの子供まで。

 

2時間のレッスンの冒頭は、受け身の練習である。

このあたりは、柔道の講習会に似ている。頭を打たないよう、背中を丸めて後方に倒れる。

 

「ストーンは絶対に持ち上げないように」との注意も。

落とすと、足の甲や指を骨折してしまうそうだ。ストーンはあくまで氷の上を滑らせて移動させる。

 

靴底にゴムのカバーを履くと滑らなくなり、氷上でも立てる。カバーを外すと、よく滑る。

 

これを操れるかどうかが、初心者かどうかの分かれ目なのだろう。

素人はひたすらコケる。結局、私たち夫婦は、大半の時間を両足にカバーを付け、推進力に欠ける動作を繰り返した。

 

試合

 

レッスンの仕上げは、8人対8人に分かれての試合となる。

 

自分がストーンを投げる番となり、左足のカバーを外して格好よく投げようとするものの、態勢を崩し、あわてて投げる。すると、ストーンは的(ハウス)を大きく越え、無効のエリアに行ってしまう。

 

む、無念じゃ。

 

味方が投げる番になると、チームで作戦会議が行われる。

若者のリーダー格が、盛んに相手チームのストーンをはじき出す作戦を主張する。

 

私には、「ここは、次の相手のストーンを予測して、邪魔な位置(ガード)にストーンを置くのが正解」に思える。だが、誰も同調しない。

皆、別のストーンにぶつける喜びに浸っている様子である。(う~~む「素人め」と思うが、他人のことを言える義理ではない。)

 

チームメートが投げる際は、ブラシを持ってスイープする。しかし、体験レッスンは、スイーパーが7名もいて、立錐の余地もない。

大抵の「投げ手」はストーンを勢い任せに投げてしまうので、スイープがどれほど役に立ったかも判然としない。

 

それやこれやで、3試合(各2エンド)、1人計6投して、レッスンを終えた。

 

ストーンを投げた際の写真を妻に撮ってもらったが、腰は曲がり、バランスは崩れで、サマにならない。テレビの見様見真似で、格好よく投げたつもりだったが、残念至極である。

 

感想戦

 

それでも、楽しい体験だった。

 

ほかのシートでは、日本代表候補のトレーニングのほか、軽井沢町のお年寄りから子供までが競技に集中していた。

皆、真剣で、楽しそうだった。

 

妻「どうよ、もう1回レッスン受けてみる?」

私「ふむ、それもいいが、自分としては、相手のストーンを邪魔する位置にストーンを置くよう、皆に分かってもらいたい」

妻「ふん、そんな、つまらない人間は、チームに入れてもらえないね」

 

 

(イラスト:鵜殿かりほ)