シニア楽団は、ゆるく奏でる
2024.05.07知り合いが、年配者の素人オケ(オーケストラ)に所属している。
引退後に久しぶりに楽器を触ったり、子育てを終えてから楽器を始めたりした人が、ほとんどのようだ。高校や大学時代に本格的に活動していた人たちとは、少し異なる。
とはいえ、日ごろの鍛錬と毎週の練習には余念がない。
高齢者は話が長い
練習は、大抵、公民館の一室を借りて行われる。
だが、公民館のスケジュールは立て込んでいる。寿学級に、手芸サークル、絵画同好会、男の手料理、子どもチャレンジ教室、etc.。
多人数のオケとはいえ、利用時間は限られる。
リーダー:「そんなわけで、今日の練習は利用が2時間に限られますんで、みなさん、ご協力のほど、よろしくお願いします。
え~と、練習を始める前に私から一言だけ。
前回お話しした定期演奏会の開催場所ですが、2か所ほど当たってみました。どこも利用料が高く、**会場が**万円、○○会場が○○万円と、予算オーバーですね。
そこで、私がそれぞれの会場に詳しく事情を訊いてみまして、、、あれやこれや、、、で、私もいろいろと手を尽くして、、、なんだかんだ、、、、それでも何とかしたいと思い、、、四の五の、、、、ところがいろいろあって、、、ぐだぐだぐだ、、、、」
こうして、練習時間はどんどんと削られていくのだった。
一心不乱
素人のオケとはいえ、指揮は本物の音楽の先生やプロの卵にお願いしている。
指揮者:「では、第〇小節から、練習しましょう。ハイ!」
演奏始まる。
演奏が乱れ、指揮者、途中で指揮を止める。
だが、演奏は止まらない。
指揮が止まっていることに、気づかない者、多数。
指揮者、指揮を止めたまま、茫然。
演奏はなお続く。
指揮には目もくれず、一心不乱に楽譜を追いかけるのが、素人オケの醍醐味である。
一心不乱(2)
パート全体で長い休符があるときも、要注意だ。
ある曲では、28小節の全休符が続いたあとに、はじめて某パートが音を出すことになっていた。
だが、手持ちの楽譜には他のパート(楽器)の譜面はない。
28小節目。
音を奏で始めた団員が、数名。
1小節早い。
しかし、ほかの団員も、あわてて加勢する。
自分が間違えた、と信じ込んでいるのである。
こうしてパート全体が1小節早く奏で始め、1小節早く演奏を終えた。
周囲のパートには耳を貸さず、一心不乱に楽譜を追いかけるのが、素人オケの醍醐味である。
演奏会場
演奏会場のスペースが限られているときは、少人数のユニットも誕生する。木管楽器のアンサンブルとか、弦楽器のアンサンブルといった具合だ。
モーニング娘。でいうところのミニモニのようなものか(ちと、古い)。
少人数ユニットは介護施設での演奏が多い。
演奏する方も聞く方も似たような年齢なので、演奏者と聴衆が入れ替わっても、おそらくすぐには気づかないだろう。
これが定期演奏会となると、俄然大きなホールが使われる。集客もたいへんで、来客向けのサービスとして、戦後歌謡も曲目に組み込まれるという。
最近の定番は「東京ブギウギ」である。
キーボード
年配者の集まりなので、練習を急遽欠席する団員も多い。
体調不良や、夫の介護、妻の介護、孫の相手である。
そういうときに圧倒的なプレゼンスを示すのが、キーボードだ。
足りなくなった楽器の音色を補う。
最近のキーボードは、いろいろな音色を出せて、なんでもござれだ。
私:「ならば、はじめからキーボードだけでいいんじゃないの(笑)。」
知り合い:「まあ、そういうことだ。実際、ほかの市には、キーボード7~8台を並べて、演奏しているシニアのオケもある。。。」
私:「・・・」
関東大会
そんなわけで、素人オケはなんだかんだと騒々しい。
が、みな大まじめで、心豊かな老後の生活の一コマである。
知り合い:「オケ同士の横のつながりもあってな、関東地区合同の演奏会もあるんだ」
私:「ほぅ、お盛んなことで。」
知り合い:「2年に1度だった関東大会も、今年から毎年になる」
私:「いまどきのシニアは、みんな元気だからな」
知り合い:「いや、そうじゃないんだ。老い先短いわれわれは、2年に1度じゃ間に合わないってことでさ。。。」
私:「・・・」
(イラスト:鵜殿かりほ)