金融経済イニシアティブ

国会図書館は知識の宝庫

2025.07.01

国立国会図書館は、東京メトロ永田町駅から歩いて5分ほどの場所にある。

国会議事堂に隣接しているのは、主な役割が国会活動のサポートにあるからだろう。

 

あわせて、広く国民に図書館としてのサービスを提供している。利用者登録を行なえば、誰でも閲覧できる。

蔵書数は、約4753万点(2023年度、資料、新聞を含む)。国内出版物のほとんどをカバーしている計算だろう。

 

国会図書館は、知識の宝庫、国民の宝である。

 

背筋が伸びる

 

図書館に出かける前に、お目当ての本や資料があるかどうかを確認しておきたい。ホームページで、いつでも検索できる。

閲覧は、館内の専用の端末から申し込む。約20分で窓口に本が到着するので、手続きの後、閲覧席で目を通すことになる。

 

案外多いのが、若者の利用だ。

誰一人として口を利かず、黙々と本を読み、メモをとっている。

おのずから、こちらの背筋も伸びる。

 

人生に残されたわずかな集中力を、すべて使い果たす気分だ。

毎回、爽快感と疲労を手に、図書館をあとにしている。

 

半日かけて筆写する

 

図書館所蔵の一部の本や資料は、デジタル化を終えている。

 

デジタル化の有無も、自宅から検索できる。著作権の扱いに問題のない書物を対象に、デジタル化を進めているようだ。

 

先日も、探していた本(「財政法逐条解説(コンメンタール)3版」)がデジタル化済みであることを知った。

さっそく国会図書館に出かけ、閲覧席の端末からデジタル版を読む。

76年前に出版された本(1949年刊)にもかかわらず、画像は鮮明だ。

 

ページを繰りながら、メモをとる。

本の内容を正確に筆写しようとするのは、何年ぶりだろう?

 

元来、悪筆の私は、自分で書きとったメモさえ、あとから解読できない。

慎重を期してメモをとるおかげで、半日もかかってしまった。

 

成果は、以前のコラムに書いた(2025年3月「財政法はなぜ厳格な財政規律を求めているのか~昭和7年の教訓とは」)。

その顛末を友人に話すと、えらく褒められた。

彼の説によれば、成果物の評価は費やした労力に比例するという。

 

が、しかし。。。

 

ある時、ネットを眺めていて、デジタル化済みの本や資料には3種類の閲覧形式があることを知った。

 

①だれでも自宅から見ることのできる本や資料、②利用者登録した者であれば、自宅からでも見ることのできる本や資料、③国会図書館内でのみ閲覧できる本や資料、の3種類だ。

 

ん? なんか、ヤな予感がするな。。。

まさかとは思うが、、、、念のため調べておこう。。。

 

「財政法逐条解説(コンメンタール)3版」と。。。なになに?

分類は「②利用者登録した者であれば、自宅からでも見ることのできる本」だった。

 

むむ、、、

ってことは、図書館に出かけなくても、自宅から読めたのか。あちゃあ~。

さらに調べると、閲覧はもちろん、自宅からでも印刷できるのだった。

 

うぐぐぐぐ。。。

筆写に半日もかけたのに。。。

友人の説に従えば、これでコラムの価値は半減である。

 

秘伝や時代を読む

 

国会図書館のホームページには、「電子展示会」という名の楽しいコーナーもある。

所蔵の史料をもとにテーマを定め、解説を加えている。

 

例えば、「本の万華鏡:第33回 NINJA虚像(エンタメ)と実像(ホンモノ)」では、三大忍術書を紹介している。

 

これら忍術書の一部はすでにデジタル化済みで、だれでも読むことができる。

 

17世紀前後(江戸時代)に書かれた書物だが、秘伝が世に広く公開されるとは、忍者たちも草場の陰で嘆いていることだろう。

 

また、「本の万華鏡:第10回 大正デモクラシーとメディア」の「第1章 風刺漫画から見る大正デモクラシー」では、大正時代の米騒動が記されている。

 

1918年(大正7年)、富山で起きた一揆が全国に広り、政府は米の緊急輸入や白米の廉売政策を行なったという。

 

100年以上前の話だが、政府による「廉売政策」とは、最近どこかの国で聞いたような話でもある。

 

「緊急輸入」も実施されたというから、今より柔軟な政治だったのかもしれない。

あるいは、消費者と議会の怒りがそれだけ凄まじかったということか。

 

ちなみに、「米騒動」のページに掲載されている風刺漫画は、岡本一平氏の作である。妻は、小説家岡本かの子氏。夫婦の長男が、前回万博の「太陽の塔」のデザインで名高い岡本太郎氏である。

 

(イラスト:鵜殿かりほ)